革命を成し遂げたいなら、 周りの空気を読んではいけない。 維新のリーダーたちが、勝利をつかんだ秘密とはーー? 日本のトップ社会学者、大澤真幸先生が熱弁!

2018.10.17

革命を成し遂げたいなら、 周りの空気を読んではいけない。 維新のリーダーたちが、勝利をつかんだ秘密とはーー? 日本のトップ社会学者、大澤真幸先生が熱弁!

革命を成し遂げたいなら、 周りの空気を読んではいけない。 維新のリーダーたちが、勝利をつかんだ秘密とはーー? 日本のトップ社会学者、大澤真幸先生が熱弁!

「世界に誇れる力を持っている日本が、
なぜ今、大きな光を見出せずにいるのか――? 
なんとかして停滞した状況を打破したい」

そう渇望している経営者は少なくないに違いありません。
しかしいざ、自分が、企業や社会の未来に向けての舵取りを任され、
大きな決断に迫られたとしたら――?

「つい弱気が顔を出し、自分の選択は間違っていないか? 
今が本当に“その時”なのか? 
過去の成功者はどのような決断を下したのか? 
と、誰もが“歴史の神様”にお伺いを立てたくなる」と、
社会学者の大澤真幸(おおさわ まさち)先生は語ります。

周囲の人たちを巻き込まざるを得ない大きな決断。
一度決めたら後戻りはできない。
そんな時に誰かに同意を求めたい気持ちは、ごもっとも。
当然のことのように思えます。

しかし――。
「本当に、企業を、社会を変えたいのなら、
誰かにお伺いを立ててはいけない。
空気を読んでいるうちは、
本当の変革はできません」。

大澤先生が言い切った言葉に、
会場には驚きとも頷きともとれるどよめきが湧き起こりました。

これは、10月3日に行われた、
アルマ・クリエイションが主催する「社会大学構築プロジェクト」の、
第3回ゼミナールでのひとコマ。

「社会大学構築プロジェクト」は、
専門分野を究めた学者の方々をお招きしてご講演いただき、
アカデミックなお話の中から普遍的な教訓を得て、
ビジネスに活かそうという取り組みです。

大澤先生は、理論社会学がご専門。
東京大学大学院社会学研究科博士課程を経て、
千葉大学文学部助教授、
京都大学大学院人間・環境学研究科教授を歴任されました。

興味分野は幅広く、著書も多数。
今回のテキストとなった『日本史のなぞ』(朝日新書)は
2016年に出版され、各界から大きな注目を集めました。

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講演のテーマは、
「日本社会を変えるには?――歴史から学ぶ」。

大澤先生曰く、
日本社会はほとんど革命が不可能な社会。
その構造下にある日本企業もまた然りです。

それでもなお、改革を成し遂げようとする時、
必要なものは何なのか――。

講演で大澤先生がフォーカスしたのは、
今からちょうど150年前に起きた、明治維新です。

大久保利通、西郷隆盛は、不利な状況に置かれながら、
あえて周りの空気を読まずに戦いに挑み、
結果、見事に勝利を手にして、
明治維新の立役者となりました。

「クリティカルな局面では、
“歴史の神様”の許可なしに事を起こせるかどうかが、
勝敗を分けます。
神様に責任を転嫁してはいけない。
覚悟を持ち、
自分自身の責任で行動することが求められるのです」
と大澤先生は述べました。

自分自身で大きな決断を下すためには、
自信や自尊心が不可欠です。
ところが近年、日本人は自信をなくしている、
と、大澤先生は指摘します。

NHKが5年ごとに実施している「日本人の意識」調査によると、
「日本は一流国だ」など、
日本に対して自信を持っていると回答した人の割合は、
1980年前半をピークに低下。
2003年以降は上昇に転じているのですが、
大澤先生はこの状況をむしろ、
「自信のなさの裏返し。空威張りなのではないか」
と不安視しています。

日本人が自信を取り戻すためには、
どうすればよいのか――。

歴史に目を向け、
明治維新の創設行為を振り返ることは、
そのためにも意義あること、
と大澤先生は提言します。

近代化の大きな一歩を踏み出したという意味で、
明治維新は成功した革命でした。

しかし一方に、欺瞞もありました。
明治維新を主導した下級武士たちは、
武士の自尊心が保たれる社会を目指していたにもかかわらず、
近代社会が実現したとたんに、
武士は無用の長物になってしまったのです。
それでも「これでよかったのだ」と
自分を納得させるしかありませんでした。

つまり武士は、勝ち組にして、負け組。
現代日本人の深い共感の対象となっているのは、
敗者としての新撰組、西郷隆盛、坂本龍馬ら。
それら敗者の願望を受け止め、
実現させることができれば、
日本人は初めて、偉大な社会を創設した
という自己確信を得ることができるだろうと、
大澤先生は言います。

そして、もうひとつ。
変革を成功に導くには、
「ここぞ!」というクリティカルな局面を
見極められるかどうかが重要です。
「あの時こうしていれば……」と悔やんでも、後の祭り。
行動のタイミングが勝敗を決するのです。

大澤先生は、将棋棋士の羽生善治さんを例に挙げ、
「羽生さんの強さは、
一手一手の上手さはもちろんですが、
クリティカルな局面を見逃さないことにあります」
と述べました。

日常の中のアクセントのように現れる
クリティカルな局面――。

この出現に敏感に気付くためには、
日頃の勉強を怠らないことに加えて、
アンテナを磨き続けることが大切です。

講演後の質疑応答の時間には、
史実をどうビジネスに応用することができるか
という観点から多数の質問が飛び、
会場は大盛り上がり。
熱い雰囲気の中、時間いっぱいでの閉幕となりました。

ここからまた、アルマ発、産学共同の成果が生まれることに、
期待が高まります。